第2回フォルテピアノ・アカデミー報告

2019年7月13日〜15日の3日間にわたり、さいたま市プラザウエストで第2回フォルテピアノ・アカデミーが開催されました。登場した楽器、期間中開催されたコンサート、また〈音楽の友〉に掲載された記事などについて報告します。

日本を代表するフォルテピアノ奏者小倉貴久子がプロデュースするフォルテピアノ・アカデミー!

2019年7月13日(土)〜15日(月・祝)*終了しました。

〜フォルテピアノにどっぷり浸る3日間〜

様々な種類の打弦鍵盤楽器が勢ぞろい!

レッスン、コンサート、ワークショップ、個人練習、体験コーナーも充実!


アカデミー報告集

第2回フォルテピアノ ・アカデミーSACLAの終了報告動画



第2回に登場したフォルテピアノ たち

第2回 フォルテピアノ・アカデミー SACLAに持ち込まれた8台のフォルテピアノを紹介します。アカデミー・レッスン受講生は全ての楽器で練習ができました。聴講生向けの体験コーナーと小・中学生のためのワークショップでは試弾ができ、また会期中に開催されたコンサートに各楽器が登場しました!

A.ヴァルター

Anton Walter(1795年製の復元楽器 C.マーネ製作)F1~g3    

ウィーン式(跳ね上げ式)アクションのフォルテピアノ

ウィーン古典派の作曲家モーツァルトやベートーヴェンに支持されたフォルテピアノ。膝レバーによるダンパー解放装置と、弦とハンマーの間に薄い布を挟み込み音色を変化させるモデラートが付いている。ハンマーヘッドは鹿革で、鉄弦と真鍮弦(低音域)が木製のケースに弱い張力で張られている。軽いタッチ、明快な発音、倍音の豊かな音色が魅力。    

J.L.デュルケン

Johan Lodewijk Dulcken(1795年製の復元楽器 太田垣至製作)5オクターブ

ウィーン式(跳ね上げ式)アクションのフォルテピアノ

ウィーン古典派の巨匠モーツァルトやベートーヴェンに支持されたフォルテピアノ。膝レバーによるダンパー解放装置と、弦とハンマーの間に薄い布を挟み込み音色を変化させるモデラートが付いている。ハンマーヘッドは鹿革で、鉄弦と真鍮弦(低音域)が木製のケースに弱い張力で張られている。軽いタッチ、明快な発音、倍音の豊かな音色が魅力。    

J.ブロードウッド

J.Broadwood製作のスクエア・ピアノ1814年製 F1~c4

イギリスを代表する製作家。ハイドン、ベートーヴェン、クレメンティ、ショパンなどに愛用された。スクエアピアノは19世紀初頭のフォルテピアノ普及に大きく貢献。


ピアニーノ(プレイエル)

Pleyel製のピアニーノ 1840年製 C1~f4 (太田垣 至 修復 2015年)

ショパンに愛用された、エラールと並ぶフランスを代表するピアノメーカー。ショパンがサンドとマヨルカ島に滞在していた際に所有していた楽器と同型。

B.クリストーフォリ

Bartolomeo Cristofori(1726年の復元楽器 久保田 彰製作)

ピアノの発明者クリストーフォリのピアノ。ハンマーで弦を打つ新楽器はGlavicembalo col piano e forte(弱音と強音をもつチェンバロ)と名付けられ、長い名前が短縮されて「フォルテピアノ」「ピアノ」という呼称になった。タッチによって強弱の変化や多彩な表現が可能となったクリストーフォリの発明は、現代のピアノへと継承されている基本的構造が多数。18世紀初頭のイタリアの作品は、クリストーフォリの音色によってその真価が輝く。

タンゲンテンフリューゲル

Tangentenflügel(Ch.G.Schröter考案のアクションによる復元楽器 久保田 彰製作)G1~e3

タンゲンテンフリューゲルの発音の仕組みは、キーの後方の加速レバーにのった木片を飛ばして弦を打ち、自然落下させるというシンプルなもの。タッチによって強弱もつけられ美しい音色が魅力。モーツァルトがザルツブルク時代に弾いていたことでも知られる。


クラヴィコード

Ch.G.Hubert(1770年代製の復元楽器 深町 研太製作)F1~f3

キーの後端についているタンジェント(真鍮片)が弦をたたいて音を出し、キーを押している間は弦を押し上げたままになるので、ヴィブラート(ベーブング)をかけることができる。絶対音量は小さいが、表現力の豊かな楽器。繊細なニュアンスを生む良いタッチ習得にも最適。

 

クラヴィシンバルム

打弦タイプのクラヴィシンバルム(久保田 彰製作)c~c3  

15世紀ズヴォレのアルノーの記述図を元に、詳細については久保田彰氏の想像と経験で補い製作した楽器。当時、本当に製作されていたとしたら、ピアノの最も古い祖先となる。

 



第2回会期中に行われたコンサート

会期中に7つの楽器を使用して有料、無料の計4つのコンサートが〈多目的ルーム〉で催されました。

親しみやすいトークつきコンサートで、一般の方にも身近にフォルテピアノを聴いて感じていただきました。

第1回  オープニング・コンサート

演奏:小倉貴久子

 クリストーフォリ、タンゲンテンフリューゲル、クラヴィコード、デュルケン、ヴァルター、スクエアピアノ、ピアニーノの7台の楽器を小倉貴久子が紹介、演奏するオープニングコンサート。

2019年7月13日(土)11:00~12:00

入場料:2,000円

使用楽器:A.ヴァルター、J.L.デュルケン、J.ブロードウッド、ピアニーノ、B.クリストーフォリ、タンゲンテンフリューゲル、クラヴィコード

演奏者プロフィール

【プログラム】

 

B.クリストーフォリ

L.M.ジュスティーニ:チェンバロ・ディ・ピアノ・エ・フォルテすなわち、いわゆる小さなハンマー付きチェンバロのためのソナタ へ長調 作品1-3 より 第1楽章 シチリアーノ

 

タンゲンテンフリューゲル

J.S.バッハ:パルティータ 第4番 ニ長調 より アルマンド

 

クラヴィコード

C.Ph.E.バッハ:〈C.Ph.E.バッハの感情〉嬰へ短調 Wq.67 H.300

 

J.L.デュルケン

J.ハイドン:ソナタ イ長調 Hob.XVI:26

 

A.ヴァルター

W.A.モーツァルト:ロンド ニ長調 K.485

 

スクエアピアノ

J.フィールド:ノクターン ハ短調

 

ピアニーノ

F.ショパン:24の前奏曲集 作品28より〈雨だれ〉


第2回 小川美香子 ピアノの祖先コンサート

【特別ゲスト】演奏・お話:小川美香子

 ズヴォルのアルノーが、1430〜40年頃記したとされる鍵盤楽器理論書には「打弦式クラヴィシンバルム」と、平たい箱の上に弦を張り巡らせて、バチで叩いて音を出す楽器「ダルシマー」のことが書かれています。ダルシマー奏者の小川美香子による時を超えて蘇る、古の音世界をお楽しみいただくスペシャルコンサート。

2019年7月14日(日)12:15~12:45

入場料:1,000円

使用楽器:打弦式クラヴィシンバルム、ダルシマー

演奏者プロフィール

曲目は当日のお楽しみ。



第3回 鈴木秀美 ベートーヴェンレクチャーコンサート

【特別ゲスト】演奏・お話:鈴木秀美、小倉貴久子

 フォルテピアノとの共演によって分かる、ベートーヴェンが作品に託した想いや真価を、世界で活躍するチェリストで指揮者の鈴木秀美によるお話と演奏でお楽しみいただく贅沢なひととき。

2019年7月14日(日)17:00~18:00

入場料:2,000円

使用楽器:A.ヴァルター

演奏者プロフィール

【プログラム】

L.v.ベートーヴェン:モーツァルトのオペラ《魔笛》から〈恋を知る殿方には〉によるクラヴィーアとチェロのための7つの変奏曲 変ホ長調 WoO.46

 

チェロとクラヴィーアのためのソナタ へ長調 第1番 作品5-1


9人の受講生によるコンサート

2019年7月15日(月・祝)17:00~18:20

入場無料

使用楽器:クリストーフォリ、ヴァルター、ピアニーノ(プレイエル)

*受講生のお名前はネット上では伏せさせていただきます。

F.ショパン1810-1849 : プレリュード Op.28-15 「雨だれ」

F.ショパン1810-1849 : プレリュード Op.28-6

L.ジュスティーニ 1785-1743 : ソナタ 第1番 ト短調より バレット、クーラント

J.ハイドン 1732-1809 : ソナタ ニ長調 Hob.ⅩⅥ:37より 第2楽章、第3楽章

F.ショパン 1810-1849 : ノクターン Op.62-1

D.スカルラッティ 1685-1757 : ソナタ ニ長調 K.430

F.ショパン1810-1849 : マズルカ ハ長調 Op.67-3

L.v.ベートーヴェン 1770-1827 : ソナタ 第1番 Op.2-1より 第1楽章

F.ショパン1810-1849 : ノクターン ハ短調 Op.48-1

F.ショパン1810-1849 : ノクターン 嬰ヘ長調 Op.15-2、タランテラ 変イ長調 Op.43

W.A.モーツァルト 1756-1791 : ソナタ 変ロ長調 K.333より 第3楽章


小・中学生ワークショップ

第2回フォルテピアノ・アカデミーSACLAでは初の試みとして小・中学生ワークショップを行いました。

20人弱の小・中学生にお集まりいただき、フォルテピアノについての小倉貴久子の説明、その後2手に分かれて全ての楽器を少しずつ試弾するコーナーを設け好評をいただきました。

2019年7月15日(月・祝)11:45〜12:45(受付は11:30から)

さいたま市プラザウエスト 多目的ルーム

参加費:1,000円(大人の方も同料金で聴講できます。大人の方同伴の未就学児は無料で見学可)

11:30より多目的ルーム入口で受付開始。

事前のご予約等は必要ありません。直接ご来場ください。

7台のけんばん楽器を紹介。じっさいに楽器に触れられるコーナーもあり楽しいですよ!

ピアノを習っている小・中学生の皆さまのふるってのごさんかをおまちしています。

 

モーツァルトやショパンがひいていたピアノって今のピアノとは全くちがう形をしていました。

中のしくみはやっぱり違うの?音はどんな音だったの?

このワークショップでさまざまなぎもんをなげかけてみて。

ピアノをならっていないおともだちでも音楽が好きな人はぜひ来てください。ピアノの歴史を研究してみよう!

〈ピアノの歴史〉をあらわした小倉貴久子(おぐらきくこ)がやさしく楽しくピアノの成り立ちとへんせんを演奏しながらかいせつします。

けんばんにふれられるチャンスもあるよ!