第4回フォルテピアノ・アカデミー報告

2022年7月22日〜24日の3日間にわたり、さいたま市プラザウエストで第4回フォルテピアノ・アカデミーが開催されました。登場した楽器、期間中開催されたコンサートなどについて報告します。

フォルテピアノ奏者小倉貴久子がプロデュースするフォルテピアノ・アカデミー!

2022年7月22日(金)〜24日(日)*終了しました。

〜フォルテピアノにどっぷり浸る3日間〜

第4回ではゲスト講師に川口成彦を迎え、例年より規模を大きくして催しました!

様々な種類の打弦鍵盤楽器が勢ぞろい!

レッスン、コンサート、ワークショップ、個人練習、体験コーナーも充実!

18~19世紀初頭の様々なタイプの打弦鍵盤楽器が総勢11台が集まった第4回フォルテピアノ・アカデミー!作曲家は目前の楽器からインスピレーションを得て作曲しました。個性豊かな楽器でのレッスンは、新たな扉を開いてくれたことでしょう。レッスンの聴講も愉しく有意義な時間をお過ごしいただきました。

 今回はゲスト講師に川口成彦さんを迎え、受講生の定員を18名に増やして、さくらホールと第1リハーサル室の2箇所でレッスンを行いました。6台の楽器を、小倉貴久子と川口成彦が順番に演奏して紹介する〈オープニングソロコンサート〉。ヴァルター2台でデュオ作品をお届けする〈2台フォルテピアノコンサート〉。西野晟一朗のクラヴィコードとタンゲンテンフリューゲルに特化したコンサートとワークショップ。楽器製作家、太田垣至のワークショップと、充実のイベントがいっぱいでした。

 体験コーナーも大盛り上がり!フォルテピアノの魅力にどっぷり浸る夢の3日間となりました!


アカデミー報告集

ムジカノーヴァ2022年12月号・2023年1月号で〈第4回フォルテピアノ・アカデミーSACLAのレッスンから〉18世紀の表現(バッハやモーツァルトを弾くときに知っておきたい)というタイトルで、誌上レッスンが繰り広げられました(取材・文ー中嶋恵美子氏)

第4回フォルテピアノ・アカデミー SACLA の報告動画



第4回に登場した楽器たち

第4回フォルテピアノ・アカデミー SACLAには総計11台の鍵盤楽器が集いました。さくらホールと第1リハーサル室で行われたレッスン。4部屋用意された練習室には、デュルケン、ジルバーマン、クラヴィコード2台が配置されました。

アカデミー・レッスン受講生は全ての楽器で練習ができました(時間制限あり)。聴講をお申し込みの方にはご希望に応じて〈体験コーナー〉も用意されました。またコンサートに各楽器が登場しました。

A.ヴァルター

Anton Walter(1795年製の復元楽器 C.マーネ製作)F1~g3    2台

ウィーン式(跳ね上げ式)アクションのフォルテピアノ

ウィーン古典派の作曲家モーツァルトやベートーヴェンに支持されたフォルテピアノ。膝レバーによるダンパー解放装置と、弦とハンマーの間に薄い布を挟み込み音色を変化させるモデラートが付いている。ハンマーヘッドは鹿革で、鉄弦と真鍮弦(低音域)が木製のケースに弱い張力で張られている。軽いタッチ、明快な発音、倍音の豊かな音色が魅力。    

J.L.デュルケン

Johan Lodewijk Dulcken(1795年製の復元楽器 太田垣 至製作)5オクターブ    

ウィーン式(跳ね上げ式)アクションのフォルテピアノ

ウィーン古典派の巨匠モーツァルトやベートーヴェンに支持されたフォルテピアノ。膝レバーによるダンパー解放装置と、弦とハンマーの間に薄い布を挟み込み音色を変化させるモデラートが付いている。ハンマーヘッドは鹿革で、鉄弦と真鍮弦(低音域)が木製のケースに弱い張力で張られている。軽いタッチ、明快な発音、倍音の豊かな音色が魅力。

B.クリストーフォリ

Bartolomeo Cristofori(1726年の復元楽器 久保田 彰製作)

ピアノの発明者クリストーフォリのピアノ。ハンマーで弦を打つ新楽器はGlavicembalo col piano e forte(弱音と強音をもつチェンバロ)と名付けられ、長い名前が短縮されて「フォルテピアノ」「ピアノ」という呼称になった。タッチによって強弱の変化や多彩な表現が可能となったクリストーフォリの発明は、現代のピアノへと継承されている基本的構造が多数。18世紀初頭のイタリアの作品は、クリストーフォリの音色によってその真価が輝く。


G.ジルバーマン

Gottfried Silbermann 1746年製(1746年 Freibergの復元楽器 久保田 彰製作2020年)F1~f3

G.ジルバーマンはザクセン地方におけるオルガンづくりの名工でした。イタリアのクリストーフォリの発明を元にフォルテピアノの製作を始め、J.S.バッハからこの進取の楽器についての意見を仰ぎます。バッハは1747年にポツダムのフリードリヒ大王に謁見した際、改良されたジルバーマンのフォルテピアノを気に入り即興演奏をしています。

J.ブロードウッド

J.Broadwood & sons 製作のスクエア・ピアノ1814年製 F1~c4(太田垣 至 修復 2012年)

イギリスを代表する製作家。ハイドン、ベートーヴェン、クレメンティ、ショパンなどに愛用された。スクエアピアノは19世紀初頭のフォルテピアノ普及に大きく貢献。

クラヴィコード

J.H.Silbermann(1775年製の復元楽器 太田垣 至製作) 2台

Ch.G.Hubert(1770年代製の復元楽器 深町 研太製作)F1~f3

キーの後端についているタンジェント(真鍮片)が弦をたたいて音を出し、キーを押している間は弦を押し上げたままになるので、ヴィブラート(ベーブング)をかけることができる。絶対音量は小さいが、表現力の豊かな楽器。繊細なニュアンスを生む良いタッチ習得にも最適。


タンゲンテンフリューゲル

Tangentenflügel(Ch.G.Schröter考案のアクションによる復元楽器 久保田彰製作)G1~e3

タンゲンテンフリューゲルの発音の仕組みは、キーの後方の加速レバーにのった木片を飛ばして弦を打ち、自然落下させるというシンプルなもの。タッチによって強弱もつけられ美しい音色が魅力。モーツァルトがザルツブルク時代に弾いていたことでも知られる。

クラヴィシンバルム

打弦タイプのクラヴィシンバルム(久保田 彰製作)c~c3  

15世紀ズヴォレのアルノーの記述図を元に、詳細については久保田彰氏の想像と経験で補い製作した楽器。当時、本当に製作されていたとしたら、ピアノの最も古い祖先となる。



第4回会期中に行われたコンサートとワークショップ

会期中に一般の方に開かれた3つのコンサートと、最終日には受講生コンサートが催されました。

また、受講生・聴講生を対象に、クラヴィコードワークショップと、楽器製作家によるワークショップが開催されました。

(1)6台の鍵盤楽器によるオープニングソロコンサート

演奏・お話:小倉貴久子・川口成彦

6台の楽器を小倉貴久子と川口成彦が紹介・演奏するオープニングソロコンサート。

2022年7月22日(金)11:00~12:00*終了しました。

さいたま市プラザウエスト さくらホール

入場料:2,000円

使用楽器:B.クリストーフォリ、G.ジルバーマン、クラヴィシンバルム、J.L.デュルケン、A.ヴァルター、スクエアピアノ(ブロードウッド)

演奏者プロフィール

【プログラム】

〔B.クリストーフォリ〕

L.ジュスティーニ:ソナタ 第4番 ホ短調 Op.1-4(小倉)

〔ジルバーマン〕

S.de.アルベロ:レセルカータ、フーガとソナタ ニ調(川口)

〔クラヴィシンバルム〕

ファエンツァ写本よりベネディカムス ト調(小倉)

〔J.L.デュルケン〕

W.A.モーツァルト:ファンタジー ニ短調 K.397(川口)

〔A.ヴァルター〕

L.v.ベートーヴェン:ロンド ハ長調 Op.51-1(小倉)

J.N.フンメル:ロンド・ファヴォリ 変ホ長調 Op.11(小倉)

〔スクエアピアノ〕

F.M.ロペス:スペインのファンダンゴによる変奏曲 ニ短調(川口) 

M.アルベニス:ソナタ ニ長調(川口)


(2)西野晟一朗 クラヴィコード・タンゲンテンフリューゲルコンサート

2022年7月23日(土)13:00~14:00*終了しました。

さいたま市プラザウエスト さくらホール

入場料:2,000円

使用楽器:クラヴィコード、タンゲンテンフリューゲル

演奏者プロフィール

【プログラム】

〔クラヴィコード〕

C.P.Eバッハ:ロンド ニ短調(識者と愛好家のためのクラヴィーア曲集より)Wq.61-4

ロンド ハ短調(識者と愛好家のためのクラヴィーア曲集より)Wq.59-4

〔タンゲンテンフリューゲル〕

ヴュルテンベルクソナタ 第1番 イ短調 Wq.49-1

W.A.モーツァルト:ピアノソナタ 第1番 ハ長調  K.279


(3)西野晟一朗 クラヴィコード ワークショップ

2022年7月23日(土)[A] 11:00~11:50、[B] 14:20~15:10、[C] 15:20~16:10、[D] 16:20~17:10、[E]18:30〜19:20

さいたま市プラザウエスト 第2リハーサル室(3階)*終了しました。

各回定員:10名

受講生・聴講生対象

講師プロフィール

注目のクラヴィコード奏者、西野晟一朗による受講生・聴講生を対象にしたワークショップ(5回)

各回定員10名のグループレッスンで、実際にクラヴィコードのタッチなどが学べます 


(4)太田垣 至 ワークショップ 〜歴史的鍵盤楽器の基本〜

2022年7月23日(土)17:30~18:10*終了しました。

さいたま市プラザウエスト さくらホール

受講生・聴講生対象

講師プロフィール

〈歴史的鍵盤楽器の基本〉〜フォルテピアノをより深く知るために〜

フォルテピアノ製作・修復家の太田垣至による、楽器の構造、歴史、調律、調整など製作者サイドからの視点による講座


(5)小倉貴久子・川口成彦 2台フォルテピアノコンサート

2022年7月24日(日)13:00~14:00*終了しました。

さいたま市プラザウエスト さくらホール

入場料:2,000円

使用フォルテピアノ:A.ヴァルター2台

演奏者プロフィール

【プログラム】

W.A.モーツァルト: 2台のクラヴィーアのためのラルゲットとアレグロ 変ホ長調 K.deest

2台のクラヴィーアのためのフーガ ハ短調 K.426

2台のクラヴィーアのためのソナタ ニ長調 K.448

J.C.バッハ: 2台のクラヴィーアのためのソナタ ト長調 Op.15-5


(6)受講生コンサート

2022年7月24日(日)17:15~19:40*終了しました。

さいたま市プラザウエスト さくらホール

入場無料

使用フォルテピアノ:ヴァルター・タンゲンテンフリューゲル・スクエアピアノ

演奏:18人の全日程受講生

J.ハイドン 1732-1809:ソナタ 第42番 ト長調 Hob.ⅩⅥ:27

 

J.S.バッハ 1685-1750:平均律クラヴィーア曲集 第1巻より第1番 BWV846 プレリュード

 

W.A.モーツァルト1756-1791:ファンタジー ニ短調 K.397

 

C.P.E.バッハ 1714-1788:ファンタジア 変ロ長調 Wq.61-9

 

D.スカルラッティ 1685-1757:ソナタ ホ長調 K.380、ニ短調 K.141

 

J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻より第23番 ロ長調 BWV868

B.ガルッピ 1706-1785:ソナタ ハ長調 TG27より第2・3楽章

 

W.A.モーツァルト:ソナタ ハ長調 K.330より第1楽章

 

J.S.バッハ:フランス組曲 第5番 BWV816よりアルマンド、ルール、ジグ

 

W.A.モーツァルト:ファンタジー ニ短調 K.397

 

W.A.モーツァルト:ソナタ 変ロ長調 K.333より第1楽章

 

L.v.ベートーヴェン1770-1827:ソナタ 第14番 嬰ハ短調 作品27-2「月光」より第1楽章

 

J.ハイドン:《カプリッチョ》ト長調Hob.ⅩⅦ:1

 

W.A.モーツァルト:ファンタジー ニ短調 K.397

 

W.A.モーツァルト:ソナタ 変ロ長調 K.281(189f)より第1楽章

 

L.ジュスティーニ 1685-1743:ソナタ 第1番 ト短調よりジガ

W.A.モーツァルト:ソナタ 第8番 イ短調 K.310より第1楽章

 

J.-H.ダングルベール 1629-1691:プレリュード ハ長調

K.クルピンスキー 1785-1857:ポロネーズ ニ短調

 

C.P.E.バッハ:ヴュルテンベルクソナタ 第1番 イ短調

 

J.S.バッハ:フランス組曲 第1番 ニ短調 BWV812よりアルマンド

W.A.モーツァルト:ソナタ 第12番 ヘ長調 K.332より第1楽章